先日ご招待をいただき、リニューアルしたばかりの山崎蒸溜所にお邪魔した。
ウイスキー事業開始から100周年を迎え、さらなる品質向上や蒸溜所の魅力を広く伝えるため、2023年10月の白州に続いて11月に山崎も一般公開を再開。
今回は「山崎蒸溜所の取材で特別な体験や貴重な裏話が聞けて満足この上ない」と題し、リニューアルした山崎蒸溜所やそこで聞けた山崎の歴史を感じる興味深い話などをまとめていこうと思う。
刷新した2つの山崎蒸溜所ツアー
リニューアルに伴う変更点として以前からあったツアーは内容が刷新され、名称は山崎蒸溜所 ものづくりツアーと山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージという2つが用意されている。
ざっくりとだが下記のような違いがある。
▼山崎蒸溜所 ものづくりツアー
所要時間 80分、参加費 3,000円(税込)
蒸溜棟や貯蔵庫など、蒸溜所内の見学や希少な原酒のテイスティングができる。
▼山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ
所要時間 120分、参加費 10,000円(税込)
通常のものづくりツアーに加えて、プレステージツアーでしか立ち寄れない製造エリアや実際のつくり手の作業の様子も見学可能。テイスティングでもより希少なウイスキーを楽しめる。
プレステージツアーは本当に特別な体験ができるツアーになっており、取材ではプレステージのみが体験できるサンプリング作業の様子を撮影させていただいた。
他でもなかなかできる経験では無いと思うので、キミにもぜひオススメしたい。
特別なテイスティングや”杜”が味わえる新しい施設
そして今回のリニューアルに伴い新たな施設が3つ誕生し、既存の2つの施設が改修された。
まず新しい施設はエントランス。
蒸溜窯の銅素材を再利用した門をメイン、山崎の”杜”の空気感を味わいながら山崎ウイスキー館へ迎えるような作りに生まれ変わった。
次に仕込み前室。
これまでツアーにおける説明などは実際の仕込槽や蒸溜釜の前など、暑い環境で行われていたそうだが、事前に落ち着いて話が聞けるスペースが新設された。
3つ目は新ゲストルームである「The YAMAZAKI」。
こちらはプレステージツアーのためのゲストルームである。
ゲストルームに向かう途中に並べられた、過去の珍しい容器も必見。
ちなみにゲストルームには大きなモニターが用意されているが、生前鳥井信治郎と松下幸之助が懇意だったということでパナソニック製を採用するなど、こだわりに満ち満ちた部屋になっている。
ウイスキー造りの歴史やより近くでリアルにものづくりを感じるために改修された施設
次に改修された施設だが、まずは山崎ウイスキー館。
建物自体は昔からのものだが、サントリーのウイスキー造りの歴史やこだわりが感じられる展示が追加された。
その他にテイスティングラウンジも改修されている。
その他に改修されたのは発酵室と蒸溜棟。
発酵室はツアーで実際に入室して香りを体験できるように改修された。
白州の時はここまで近づけなかったと記憶しているが、動画撮影もOKということで少し撮らせていただいた。
こちらは発酵から3日程度経っているウイスキー。
発酵が進むと泡が出続けて溢れてしまうため、プロペラを使って泡を切っている。
プロペラなんか使わなくても、もっとスマートの泡を抑える方法があるのでは?と思うかもしれないが、泡を残すのも大切な要素らしく、それらを計算した上でプロペラを使っているらしい。
そんなお話を伺いながら進めるのも面白い。
蒸溜棟は山崎ロゴが追加されたり、蒸溜工程を説明するパネルなどが追加される改修が入っている。
白札とミズナラと。印象に残ったお話たち
今回参加させていただいた中で、特に印象に残っている非常に興味深いお話が2つあった。
1つはサントリー初のウイスキーである白札。
洋酒文化を日本に定着させるため、鳥井信治郎が満を持して1929年に市場に投入した国産初の本格ウイスキー白札。
社運を賭けて挑んだ挑戦だったが、残念ながら当時の日本人にはまったく響かなかった。
予想外の人気の無さは経営にも大きな影響を与え、しばらくは新しいウイスキーを仕込むこともできないほどの資金難だったとか。
しかしそれにもめげずに商売を続け、不屈の精神で1937年に角瓶を発売。
これが大ヒットし、今日でも愛されるブランドへと成長を続けている。
興味深いのは推測の域を出ない話ではあるものの、白札と角で同じ原酒を使っていた可能性が高いこと。
ウイスキーの熟成は数年でできるものではないし、先ほど記載した通り白札の失敗で資金難だったことを考えると説得力がある。
それなのにどうしてそんなに差が出たのかというと、初代マスターブレンダーである鳥井信治郎の才能が開花したからではないか、とのことだった。
もう1つは近年熱い視線を浴びる樽材となったミズナラ。
日本はもちろん、海外の有名ウイスキーでもミズナラで熟成した商品が販売されている。
そして山崎は、そのミズナラの魅力を世界に知らしめたと言っても過言ではないウイスキー。
しかしそのミズナラを使い始めた理由は、やむを得ない事情からだったそうで。
1941年に始まった太平洋戦争の影響で海外から樽の輸入が困難になり、仕方なく国内で樽に適した素材を探す中で選ばれたのがミズナラ。
ただ扱いが難しい上に香りが付き過ぎるなど、使い始めた当時のブレンダーにはあまり好まれていなかったとか。
しかし繰り返しの使用、そして長期熟成によって魅力が広がり、今や山崎にとっては欠かせない要素となった。
現在のサントリーのチーフブレンダーである福與伸二さんがそんなことを色々と語ってくださり、その中で飲む山崎はまた格別だった。
まとめ
いかがだっただろうか。
山崎蒸溜所についてまとめてきた。
山崎蒸溜所はもちろんサントリーの歴史、ミズナラの裏話のようなものまで聞けて個人的には非常に贅沢な取材だった。
そしてその場の香りや熱気、何とも言えない空気感は月並みだがやはり現場に行かないと味わえない。
キミもぜひ一度お試しあれ。
リニューアルした白州蒸溜所についてまとめた記事はこちら。
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