個人的な話だが、以前に鹿児島県霧島市のPRイベントに参加した時から、薩摩切子はずっと気になっていた。
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そして今回縁あって薩摩切子の工房で、直接切子師からお話しを聞けるということだったので、喜び勇んでお邪魔した。
今回は「【伝統と革新とエコと】ガラス工房弟子丸の薩摩切子に男子も女子も惚れる」と題し、薩摩切子についてまとめていこうと思う。
鹿児島県霧島市で伝統を繋げる株式会社 美の匠 ガラス工房 弟子丸
お邪魔したのは、鹿児島県霧島市にある株式会社 美の匠 ガラス工房 弟子丸。
8年前に霧島で工房をオープンされたそうだ。
こちらの代表取締役であり、切子師の弟子丸努さんに直接お話しを伺った。
工房と一緒にショップが併設されており、ショップには所狭しと薩摩切子の工芸品が並んでいる。
グラスはもちろんのこと、
タックピンや、
ペンダントもあった。
そして、売り物ではないがステンドグラスや、
何とも珍しい薩摩切子の鶴まで飾られていた。
デザイン性が高いので、男女ともに買っていく人が多いそうだ。
夫婦で来店して2人とも買っていくのも珍しくないらしく、男性がアクセサリー、女性がグラスなんていうパターンも。
プレゼントとして選ばれることも多いようで、中には還暦祝いで赤いちゃんちゃんこの代わりに赤い薩摩切子のグラスを買っていったなんていうパターンも。
個人的にそれは使えそうだと思ってしまった。
本当は芋焼酎のPRのはずだったANAの雑誌で、あまりにも目立ち過ぎた薩摩切子のグラス
ただかなりの人気で問い合わせが増えてきているらしく、手造りということもあって納期までは時間がかかるそうだ。
こちらはその一因ともなった、ANAの国際線の機内誌の表紙。
本当はグラスの中の焼酎がメインだったそうだが、完全に食っている。
まあ、焼酎は透明なので、ビジュアルではなかなか目立ちようがない。
「黒のグラスに多少色のついた焼酎を入れる」のが良いと専務の下簗さんは言っていたが、結局はこの表紙になった。
※左が下簗さん
ただ、実際これを見て買いに来た人もいたらしいし、さらにはきっと評判も良かったんだろう、これをきっかけにANA絡みの仕事も増えたそうだ。
薩摩切子と霧島切子と江戸切子
ちなみに薩摩切子とは別に有名なデザインとして、江戸切子がある。
基本的な技法はどちらも同じそうだが、グラスの厚さや色などで若干の違いがあるそうだ。
そして薩摩切子のほかに、5年ほど前から霧島切子というものも作っている弟子丸さん。
霧島切子は、帯の部分に他とは違う特長的な模様が入っている。
薩摩切子では通常このようなことはしないので、薩摩切子は薩摩切子で伝統を守り、それとは違うアプローチとして霧島切子があるそうだ。
ちなみにこちらは色なし。
色なしなのに味がある。
色付きのお酒や飲み物を入れて飲んでみたい衝動にかられた。
そしてこちらは伝統の薩摩切子。
私の拙い写真でどこまで伝わっているかわからないが、非常に美しい。
黒の薩摩切子はなぜ実現不可能と言われたのか?
黒の薩摩切子は長らく実現不可能と言われていたが、その不可能を可能にしたのは弟子丸さん。
なぜ不可能と言われていたのかをお伝えする前に、まずは薩摩切子の制作過程についてお伝えしたい。
弟子丸さんが手に持っているのは全然加工をしていない最初の状態。
そして、見切れているものは除外して、左下、右、真ん中、左上という段階で進んでいく。
色ガラスの状態から少しずつ刃で削っていって模様をつけていくわけだが、普通の色であれば光にあてれば多少は透けるので見当をつけやすい。
しかし黒だとまったくと言って良いほど透けないため、長らく実現不可能と言われてきた。
弟子丸さんはそこに一石を投じ、見事黒の薩摩切子を作ることに成功したのである。
現在弟子丸さんの工房には新人を含め、11名の職人で作業を分担しているそうだ。
ただやはり、カットが一番難しいとのこと。
曲面のグラスに刃を垂直にあてる必要があり、均等にあて続けることに大変な技術が必要なんだとか。
弟子丸さん自身も大変苦労され、35年前にようやく薩摩切子の復元に成功したそうだ。
熱いものは厳禁。でも、それ以外は様々な使い方ができる
あくまでも普通のガラスなので熱いものを入れることはできないが、お酒はもちろんのこと、アイスやジェラートなどを入れても映えるそうだ。
それにちなみ、この日は専務の下簗さんがコーヒーゼリーを出してくださった。
白とのコントラストが良かったが、正面から取っていなかったことが悔やまれる。。。
とりあえずお手製だというコーヒーゼリーは非常に美味しかった。
残念ながら特にカフェなどはやっていないと思うので、キミが行っても食べられないかもしれないが。。。
余談である。
ただグラスに入った時の見え方はもちろん、手に触った時にガラスの凹凸が感じられるので、味覚、視覚、触覚でも楽しむことができる。
手間はかかるが、端材を使ったリーズナブルなecoKIRI(エコキリ)も作成
話を伺う中で素晴らしいと思ったのは、資源や素材を再利用していること。
グラスを作る際にはなんと100個作って50個ぐらいは捨ててしまうそうで、悪い時は60個になることも。
そんな、グラスとして製品で販売できないものは細かく切り出し、磨いた上でアクセサリーとして販売している。
もちろん手間はかかるしカンタンではないが、ecoKIRI(エコキリ)として安価に販売している。
これはガラス工房弟子丸が加工専門であることも関係しているとか。
他から仕入れた素材を有効活用しているというわけである。
一般的な工房では、アクセサリー用の素材を作ってもらっているので値段が上がってしまうそうだ。
しかしガラス工房弟子丸では時間と手間はかかっているものの、材料費としてはそこまでではないということもあり、リーズナブルに出せているらしい。
ガラス工房で作業の様子も見学させていただいた
職人による実際のカット風景はこんな感じ。
作業内容により、使う刃は違うそうだ。
刃は使えば削れる消耗品。
定期的な買い替えが必要だが、なんと1つ数十万円するそうだ。
薩摩切子の製作には5つの工程があるそうだが、その内の3つは磨きの工程。
さらに最終チェックが別にあるそうなので、磨きだけで4工程ということである。
磨かれる前のグラスはこんな感じ。
こんな感じでグラスは磨かれていく。
非常に手間暇がかかっていることを、改めて実感させられた。
まとめ
いかがだっただろうか。
ビジュアルを見れば、言葉はいらないかもしれない。
何はともあれ、薩摩切子は美しいしカッコイイ。
伝統を守り、次に伝える弟子丸さんもまた、素晴らしい。
あと、どうでも良いがガラス工房弟子丸のURLが当サイトのURLと何となく似てる気がして、妙な親近感も湧いてきた。
キミも興味があるならまずはチェックしてみてほしい。